研究環境

日本の大学の中でトップクラスの設備

高度な実験、最先端の研究を可能にするのは、なんといっても優れた実験装置とそれらを操作する技術者です。応用化学コースの研究設備は非常に充実しており、ほかにも研究室が独自に開発した装置や、大学共同利用の装置まで合わせると、どんなユニークな研究にも対応できる環境と言えます。自慢の装置たちを紹介しましょう!

NMR(Nuclear Magnetic Resonance: 核磁気共鳴)装置

NMR
NMR

NMR装置とは、物質の分子構造を原子レベルで解析するための装置です。この装置は測定する試料を壊すことなく分析できることが特長です。さらに類似する他の分析装置に比べて、試料の前処理が少なくて済むという利点があります。応用化学の研究分野では欠かせない分析装置で、同時に使用できるNMRが5台も設置されています。

低加速電圧高分解能走査電子顕微鏡

1kV以下の加速電圧においてもナノメートルレベルの分解能を有する電界放射型走査電子顕微鏡。3種類の検出器を有することから、組成像や凹凸像など様々なコントラストの像を得ることができ、ナノレベルで形を制御した物質の表面の構造を観察するのに、非常に優れた威力を発揮します。さらに低加速電圧で観察できるため、電気を通さない絶縁体でも表面に金属などのコーティングをせずに本来の表面を見ることができる点も優れた観察機器です。

全固体薄膜エネルギーデバイス複合装置

燃料電池/水蒸気電解ー可逆セルや全固体リチウム電池などの、新しいエネルギーデバイスは、何層もの異なる機能を持った薄い膜を積み重ねて作られます。この装置はパルスレーザー堆積法(PLD)と、高周波スパッタ蒸着法(RF-Sputter)を同時に行えるよう設計されており、様々な組成・構造の機能性薄膜を、数原子層精度で積み重ねて、エネルギーデバイスを作製することができます。この装置は幾つかの装置をスタッフで連結させてオリジナルに作製しました。(界面電子化学研究室独自開発)

固体酸化物可逆セル評価ステーション

固体酸化物可逆セル評価ステーション
固体酸化物可逆セル評価ステーション

水素やメタン、アンモニアなどを燃料として発電する固体酸化物燃料電池と、電気エネルギーを使って、水や二酸化炭素などから環境にやさしい水素やメタンを生成する固体酸化物電解セルの性能を比較評価するための装置で、一部を除きほぼオリジナルで制作しています。(界面電子化学研究室独自開発)

サイズ排除クロマトグラフィー-多角度光散乱-粘度測定(SEC-MALS-Visco)システム

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)に多角度光散乱検出器(MALS)、粘度検出器(Visco)、RI検出器を装備することで、各種高分子の絶対分子量、分散度、分子サイズ(慣性半径、流体力学半径)、分子形態、固有粘度、第2ビリアル係数などの情報を少ないサンプル量で短時間に測定することが出来ます。相対分子量測定法である従来のSEC(GPC)法とは異なり、高分子構造の影響やカラム吸着の影響を受けることなく、正確な分子量を測定できます。多角度光散乱検出器と粘度検出器には最新のフロントパネルディスプレイが付いており、スワイプ機能やズーム機能を有し、スマートフォンのように使用できます。

単結晶X線回折装置

単結晶X線回折装置

結晶サンプルにX線を照射させ、結晶内の構造を原子・分子レベルで解析する装置です。例えば、ある分子からなる結晶を用いて、この装置で測定・解析を行うと、分子がどのような構造であり、またその分子が結晶内でどのように配列されているかまで明らかにできます。新しい分子を「つくる」研究において、その分子構造を絶対的に評価することのできる強力な測定手法の一つです。

恒温振とう培養器とインキュベーター

微生物を培養して増やすためには、微生物と栄養となる液体培地を三角フラスコに入れ、適切な温度を保ちながら振とうすることで酸素を供給する必要があります。実験の目的によって様々な温度や振とう速度が要求されるため、多数の振とう培養器により効率よく実験ができる環境がそろっています。また、微生物を固体培地で静置培養するための恒温培養器も完備しており、様々な条件での微生物培養が可能です。

高速液体クロマトグラフィー タンデム質量分析(LC-MS/MS)システム

高速液体クロマトグラフィー タンデム質量分析 (LC-MS/MS) システム

高速液体クロマトグラフィーは、多数の化合物が混じった混合物溶液を親水性やイオン強度によって分離する装置です。その出口には可視紫外吸光度計と質量分析装置を設置しており、分離した化合物の可視紫外吸収スペクトルや分子量情報、部分構造情報を取得できます。サンプル中に含まれる多数の化合物の同時定量分析や未知化合物の構造情報の取得で活躍する生化学実験や有機化学実験になくてはならない存在です。

マイクロ流体デバイス

マクロ流体デバイス

手のひらサイズのガラス、シリコーンゴム、ポリマー、紙などの基板上に、半導体の微細加工技術を駆使して幅が数十〜数百マイクロメートル程度の微小な流路(マイクロ流路)を構築しています。マイクロ流体デバイスを用いることで、微量な血液でがんマーカーを測定したり、簡便・迅速にインフルエンザなどのウイルスの検出が可能です。また、マイクロ流路は溶液同士を迅速に混合でき、反応時間の精密制御が可能です。シリンジポンプを用いて溶液をマイクロ流体デバイスに導入するだけで、mRNAワクチンに利用されている脂質ナノ粒子などを精密に作製することができます。

重症度迅速診断センサー

重症度迅速診断センサー

病気の重症度を患者のそばで速やかに判定できるバイオセンサーです。バイオセンサーとは、測定対象の物質とだけ反応する生物学的な作用を利用して、物質の濃度に応じた電気信号を得る装置です。このバイオセンサーでは、重症度の指標となる血液中のアデノシン三リン酸(ATP)と乳酸と反応し、過酸化水素を生成する酵素反応を利用しています。過酸化水素の量は、ATPと乳酸の濃度とともに増加し、プルシアンブルーという鉄錯体で処理された電極で測定されます。このバイオセンサーは2種類の物質を迅速に同時測定できるよう電極が一枚の基板に集積され、電子回路によって巧みに制御される仕組みになっています。このようにバイオセンサーは、生化学、電気化学、無機化学、分析化学など多くの化学を活用して開発されます。

プレスリリース

実験室から持ち出せる化学分析装置:液体クロマトグラフィーの超小型・超軽量装置

化学の研究ではよく用いられる液体クロマトグラフィーの超小型・超軽量装置です。さて、モノがインターネットにつながることによって多くの情報がすぐに得られ、それを活用することによって便利になる社会が訪れようとしています。測定したいところに分析装置があってそこで直ちに分析結果がわかるようになると、サンプルを採取し、実験室に戻って測定する必要がなくなります。何かの異常によって工場で悪い品質の製品ができた場合にはすぐに対応することができます。病気が疑われる人が採血したあと診断結果を聞くために後日通院する必要がなくなります。そのためには、分析装置は小型、軽量、低電力でなければなりません。化学やその関連技術にはそれを可能にする力があります。まさにその成果がこの液体クロマトグラフィー装置です。

時間分解分光計測システム

ナノ秒(10億分の1秒)の高出力パルスレーザーと温度可変クライオスタットを組み合わせることで、極低温マイナス200度から高温200度の温度範囲で発光体の性能を正確に評価することができます。この計測装置による評価はディスプレイや照明および光センサーの基盤となる発光体の設計開発にとても重要です。得られた解析データ(発光速度解析やアレニウス解析など)を使って新型発光体の開発を行います。様々な用途に対応した発光体が大学で開発され、現代社会に役立っています。

超高真空装置と各種高精度測定装置

大気圧から13桁下の10の-8乗Paに排気した超高真空装置内では、化学的に活性な元素を蒸発させて分子ビームとして単結晶表面に照射し、原子層以下の単位で物質を積み上げて新物質を作ることができます。当研究室では磁性体、絶縁体、半導体など異なる物質を積層して誰も作ったことがない新しいデバイス材料をつくることが可能です。
黄色いビニールで囲まれた領域の中には紫外線露光装置がはいっており、パターンを焼き付けてデバイスを作製します。原子層レベルの薄い膜の波動関数を測定する電子分光装置や気体の透過速度を測る装置は、目的にあうように自分たちで設計し改造していきます。そのために、たくさんの工具や部品が研究室にストックされています。装置の保守・改造後は装置内壁の水蒸気を除去するため、いったん加熱しながら排気します。加熱を均一にするために、多くの装置はアルミ箔でおおわれています。

循環精製機付グローブボックス

ボックス内にアルゴンガスを充てんし、さらに、ガスを内部で循環させて、吸着材と触媒によってボックス内の水分や酸素を除去します。この中で、水や酸素で性質が影響を受けやすい様々な材料の秤量、混合、合成などを行います。私たちの場合、硫化物、ハロゲン化物、窒化物の合成、あるいは全固体リチウム電池の組み立てなど、取り扱う材料や目的に応じてグローブボックスを使い分けています。

ボールミル装置(MM400/Retch)

ボールミル装置

ボールミルとは粉砕機の一種で、セラミックなどの硬質のボールと材料の粉を円筒形の容器に入れて回転させることで、材料をすりつぶして微細な粉末を作る装置です。この装置を有機反応に利用したメカノケミカル有機合成は、有害な有機溶媒の使用を抑えた新しい手法として注目されています。伊藤研究室では、メカノケミカル合成を活用した画期的な分子変換反応の開発を行っています。

共同利用関連

北海道大学グローバルファシリティセンター

北海道大学オープンファシリティプラットフォーム参画組織

北海道大学大学院工学院/大学院工学研究院共同利用施設