120年の歴史を塗り替える!ペースト状Grignard試薬
2022.03.27
有機化学の教科書に必ず出てくるグリニャール (Grignard) 試薬。1900 年に初めてその合成が報告されて以降、有機合成において最も重要な反応剤として利用されています。一般的にこの試薬の調製は、有機溶媒を用いて有機ハロゲン化物とマグネシウム片を混合する方法で行われます。これは有機合成において確立された方法であるものの、実験操作が煩雑であることや、有機溶媒由来の廃棄物や毒性、安全性に注意する必要がありました。したがって、有機溶媒をなるべく使用せずに、簡便に合成する手法の開発が求められていました。私たちは、ボールミルという粉砕機を用いた「メカノケミカル合成」という方法により、空気下で溶媒を用いずにグリニャール試薬を合成することに成功しました。この方法で得られたグリニャール試薬はペースト状であり、有機溶媒に溶かさずにそのまま様々な有機合成反応に使用できます。これは120年以上続く有機合成の常識を打ち破る画期的な成果です。