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北海道のように広大な応用化学のフィールドチャンスを自分のものに

2022.04.02
鳴海 敦 さん

山形大学工学部 高分子・有機材料工学科 教授

学部卒業年 1997年3月

所属研究室 高分子化学研究室

応用化学コース卒業後の進路 工学部(旧)合成化学工学科→大学院工学研究科分子化学専攻修士課程修了→同博士課程修了および博士(工学)取得→日本学術研究員特別研究員PD(この間1年間米国の大学に渡航)→2007年山形大学に着任

現在の仕事紹介:新しい高分子合成を研究、持続可能な機能性素材の開発も

高分子研究の一大拠点とされる山形大学工学部で、有機・高分子化学の教育と研究開発に従事しています。

学術的に新しい高分子(ポリマー)の合成に関する研究、高性能な医療用光感受性分子の開発、材料化学分野の使命といえる持続可能な機能性素材の開発など、様々なテーマを設定し研究を進めています。

左から、新しい高分子(ポリマー)の合成研究、医療用光感受性分子の開発、持続可能な機能性素材の開発(植物資源の高度活用)のイメージ図
左から、新しい高分子(ポリマー)の合成研究、医療用光感受性分子の開発、持続可能な機能性素材の開発(植物資源の高度活用)のイメージ図

応用化学コースの魅力:化学の原則と応用で人類の発展に寄与する

一口に「応用化学」といっても、そのフィールドは北海道のように広大です。私の専門である有機・高分子の研究分野はその一つです。

河川の水は山から平野に流れ、マイナスはプラスと引き合います。化学においてもこれらは大原則であり、それを応用して高機能素材を生み出します。あるいは、逆にその大原則を打ち破る分子に辿り着けば、それは大発見となるでしょう。

大学で化学を学んでいくと、植物の光合成やヒトの生命活動も違った見方ができます。植物は光エネルギーを結合エネルギーに変えます。ヒトはその結合を切断してエネルギーを獲得します。

大学で化学の原則と応用を学び、人類の発展に寄与する。応用化学の使命は壮大です。オススメです。

高分子化学研究室の「ここがスゴイ!」:60年以上の伝統と最先端設備が共存

Staudingerによる「高分子」の発見から100年のミレニアムイヤーを迎えたのが2020年。今、業界は次の100年へと歴史を刻み始めています。「100年」という年月をどう思われるでしょうか。ニュートンの万有引力は17世紀の発見です。したがって「高分子」は考えようによっては若い学問といえるでしょう。

北大応用化学コースの「高分子化学研究室」の発足は1961年となっており、佐藤敏文先生が第4代の教授を引き継いでいます。60年以上にわたる研究室の伝統に加え、最先端の研究設備が貴君を待っているでしょう。

佐藤先生や磯野先生と作戦を練ってアイデアさえ固まれば、すぐにでも無酸素・無水状態の合成反応を仕込むことができ、翌日には自分が合成した分子の構造を同定することができるでしょう。

翌週には、その分子の大きさや形状、熱物性、光化学特性、外部環境応答性、ナノ組織化…様々な新たな知見を世界に先駆けて明らかにすることができるでしょう。世界に名だたる最先端の研究室でもこれほど充実した研究環境はそうなかなかないですよ。是非、目の前にあるチャンスを自分のものにしてください。

在学中に使っていた北海道大学の実験ノートを持って。

学生時代の学びや経験:人生の出発点、かけがえのない日々を仲間とともに

「機器分析ゼミ」「英語ゼミ」「高分子ゼミ」という名前がついていたと思います。学食で夕飯を食べた後に(研究で忙しい博士課程の先輩は抜きで)大学院の修士課程の先輩(10名)と研究室に入りたての学部4年生(5名)だけで、勉強会を開催する伝統がありました。

学部4年生にとっては、研究室に入るなり、求められる知識がいきなり「教科書」→「世界の最先端」に変わるわけですからそれはもう大変です(笑)。しかし、学部4年生、修士1年、修士2年、続けて3回勉強し、また教わる側から教える側にまわると、人はやはり成長するものです。

特に、自分が担当したテーマはそれだけ時間をかけて勉強するので、今でもちょっと詳しかったりします。研究生活を始めた学部4年生の1年間はそれまでの毎日とは違った人生の出発点、かけがえのないものとなっています。研究室の伝統・教育環境、苦楽をともにした皆様に感謝いたします。最後になりましたが、皆様のご活躍を心よりお祈りいたします。Be ambitious!

鳴海 敦
修士の学位授与式後に研究室メンバーと撮った記念写真。左端が本人。