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持続可能な社会の発展を支える研究分野、共同研究が活発な工学部の化学

2022.04.04
真栄城 正寿 准教授

北海道大学大学院工学研究院 マイクロシステム化学研究室 准教授

経歴:

2014年3月 九州大学大学院総合理工学府物質理工学専攻博士課程修了 博士(工学)

2014年4月 北海道大学大学院工学研究院 日本学術振興会特別研究員(PD)

2015年9月 北海道大学大学院工学研究院 助教

2021年4月 北海道大学大学院工学研究院 准教授

(兼任〜現在まで)

2018年7月 理化学研究所 放射光科学研究センター 客員研究員

2019年4月 ライラックファーマ株式会社(北大発ベンチャー) 技術アドバイザー

2019年10月 JST さきがけ研究員

2022年4月 高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所 客員准教授

専門研究の紹介:医薬学分野で活用するマイクロ流体デバイス(iLiNP®)を開発

様々な化学反応操作(溶液混合・反応・分離・分析など)を手のひらサイズの基板に集積化したマイクロ流体デバイスを開発し、医薬学分野に応用する研究に取り組んでいます。

マイクロ流体デバイスには、数百マイクロメートル程度の微小な流路が構築されています。一般に化学反応というと、ビーカーなどで液体を混合・反応させるイメージがあるかと思いますが、ビーカーなどの大きな容器で化学反応を精密に制御することは実は容易ではありません。それに対してマイクロ流体デバイスは、溶液同士を迅速・均一に混合したり、反応時間や温度を精密に制御できるなどの多くの利点があります。

これらの利点を生かして、最近はmRNAワクチンやナノ医薬品のキャリアとして利用されている脂質ナノ粒子を精密に製造することができるマイクロ流体デバイス(iLiNP®)の開発とワクチン製造システムや個別化医療への応用に取り組んでいます。

脂質ナノ粒子作製用マイクロ流体デバイスのイメージ図

応用化学コースの魅力:基礎研究と応用研究の両輪で走る“工学部の化学”

応用化学コースは、幅広い研究分野と実用化に近い研究が多いところが魅力です。有機化学、無機化学、分析化学、化学工学、高分子化学、生化学などの各分野の最先端の研究者が集まっており、世界的にもインパクトがある研究を展開しています。

また、応用化学コースの特徴は“工学部の化学”を学ぶことができます。工学部の化学は、持続可能な社会の発展に不可欠であり、基礎研究と応用研究の両方を大事にしています。

基礎研究で真理を追求しながら、応用研究として社会の役に立つ研究や企業との共同研究に多くの研究室が取り組んでいます。

マイクロシステム化学研究室の「ここがすごい!」:社会実装を目指し、将来活躍できる人財に成長

私たちの研究室では、独自のアイデアに基づいたマイクロ流体デバイスを開発し、分析化学、医薬、薬学などバイオ分野への応用と社会実装に取り組んでいます。

原理検証などの基礎研究を基盤にしながら、医学部・薬学部・歯学部と応用研究を進め、研究成果のいち早い社会への還元を目指しています。

研究室の特徴としては、出口(社会実装)に近い研究が多く、分野横断的な研究に取り組んでいる点があげられます。マイクロ化学や分析化学の専門的な知識や技術を身につけ、同時に創薬や医療診断、生化学の専門家との共同研究を通じて、企業などでの研究開発に役立つスキルや複数の専門性を習得し、社会で活躍できる人財に成長することができます。

マイクロ流体デバイス
我々の研究室で設計・開発したマイクロ流体デバイス。薬学部および企業との共同研究によって、このマイクロ流体デバイスを基盤としたナノ医薬品製造装置を開発しています。

担当授業の紹介:基礎的な実験操作を習得する「応用化学学生実験Ⅰ」

応用化学コースでは「分析化学I」「分析化学II」「物質変換工学」「応用化学学生実験Ⅰ」を担当しています。どの授業も学生とコミュニケーションを取りつつ、理解度を確認しながら進めています。また、授業で学ぶ基礎的な内容が、最先端の化学分野でどのように応用されているのかについても説明しています。

「応用化学学生実験Ⅰ」は、応用化学コースに配属された学生が初めて取り組む実験の授業です。私の担当は、分析化学の中の「滴定」という内容です。分析化学は、有機化学や無機化学、生化学など分野を問わずに基盤となるので、基礎的な実験操作の習得を重視しています。

実験データの処理や誤差の取り扱いについても、研究室に配属されてから困らないように、パソコンやタブレットでの解析法の習得を目指しています。実験はグループで行うため、学生間の交流や議論を促しながら進めています。

実験操作

学生時代の学びや経験:サッカーと最先端研究の共通項は「チームプレイ」にあり

学生時代に社会人サッカーチームに所属していました。サッカーはチームスポーツで、11人でコミュニケーションを取りつつ、役割分担・協力して勝利を目指します。

実は私たちが取り組んでいる研究の世界も同様で、とりわけ最先端の研究では様々な分野の研究者と協力して分野横断的に研究を進めることが増えており、チームプレイは必要不可欠。多くの大学・企業の研究者とコミュニケーションを取りながら、お互いの1番の技術を集結して目標達成を目指す現在の研究に、大いに役立っていると感じています。

2019年・研究室追いコンの集合写真。最後列左端が本人。

進路を考え中の皆さんにメッセージ:一緒に世界を驚かす研究に取り組みましょう!

皆さんはこれまで、最先端の化学に取り組むために不可欠な基礎知識を学んできました。しかし、最先端の化学をもとに得られた研究成果を実用化するには、プロセス開発や製造方法、企業との連携が必要です。

応用化学コースでは、基礎科目およびコース専門科目を通じて体系的に工学系化学を学び、皆さんの将来に役立つ知識や技術を習得することができます。

また、様々な分野で世界的に活躍しているユニークな研究者が集まっており、“普段は和気あいあい、研究は楽しく真剣に”と、メリハリをつけて研究生活を送っています。ぜひ一緒に世界を驚かす研究に取り組みましょう!