「生命の色素」合成の100年来の謎を解明
2022.04.11
呼吸や光合成に欠かすことのできない「生命の色素」と呼ばれるポルフィリン化合物は、100年以上前に発見されて以来多くの研究が行われてきました。しかしその合成の際、4つのピロールユニットがから成る環のものが選択的に生成し、3つのものは全く見つからないという謎がありました。私たちはこの謎を解明すべく、独自開発した「カルボニルひも」と呼ばれる化合物を環にする特殊なアプローチで、3つのピロールからなるポルフィリン類縁体であるCalix[3]pyrroleを合成しました。このCalix[3]pyrroleには大きなひずみがかかっているため、通常ポルフィリンが生まれる酸性条件ではわずか10秒で環拡大反応を起こしてしまうことがわかりました。本反応こそが自然界において3つのピロールからなる環が発見されていない理由だと考えられます。この環拡大反応は新たな大環状化合物合成へのアプローチになることが期待されます。