PI 佐藤 信一郎 准教授 Shin-ichiro Sato
PIメッセージ
ソフトマテリアルとは、高分子、タンパク質、コロイド、液晶、界面活性剤等のやわらかい分子の総称です。超分子は分子同士が会合してできる大きな分子で、ソフトマテリアルの多くは超分子を形成しています。ソフトマテリアル・超分子は我々の日常生活と深く関わりのある物質でありながら、計算化学にもとづいた分子レベルでの構造と機能の理解はいまだに不十分です。例えば古くから知られている高分子溶液特有の現象である下限臨界共溶温度(LCST)の存在について、全原子分子動力学計算が実施されたのはわずか数年前です。我々の研究グループではソフトマテリアルや超分子の構造と機能について計算化学をツールとして理解を深め、新たな機能性ソフトマテリアルや超分子の設計を目指しています。特にソフトマテリアルや超分子に特有な「揺らぎ」の制御と機能の制御をつなげたいと考えています。
PI 山本 拓矢 准教授 Takuya Yamamoto
PIメッセージ
近年の目覚ましい合成技術の進展により、様々な化学構造の単環状および多環状高分子が合成可能になっています。それに応じて広範な研究が行われ、かたち(トポロジー)に基づく高分子材料の特異な性質と機能、および自己組織化状態での環状高分子の特性に関して多くの知見が得られています。当研究室では、直鎖状高分子や分岐高分子では実現できない環状高分子の特徴的な性質と機能を代表的な研究テーマのひとつとして追求しています。特に、環状高分子が自己組織化と応答性に及ぼす従来にないトポロジー効果に焦点を当て、新奇機能材料としての可能性を追求しています。
研究紹介
分子を組み合わせることで発現する特殊な機能を計算化学と高分子合成実験の両面から追求します。計算により最適化された分子集合体のデザインを高分子合成により実際に構築し、分子認識機能・光機能・導電性・生体適合性などを持つ新規材料の開発を目指します。特に最近、特殊構造高分子を用いたナノ粒子の修飾を行っていますが、環状のポリエチレングリコール(PEG)を用いて、物理吸着によりナノ粒子を分散安定化させる新奇技術を当研究室が開発しました。その結果、環状PEGは直鎖状PEGと比較して、凍結、凍結乾燥、加熱、生理条件などの様々な環境に対して、金ナノ粒子の分散安定性を大きく向上させることが分かりました。さらに、興味深いことに、環状PEGの分散安定化効果は、一般的の用いられるチオール化PEGをも凌駕するものでした。これは、材料設計への高分子の『かたち』(トポロジー)の導入するものであり、高分子化学を中心として、材料科学や計算化学、薬学にわたる広範な学際的分野を確立し、技術・産業へ波及するものになります。現在、環状PEG物理吸着メカニズの解明と更なる高機能化を目指して研究を行っています。
メンバー
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佐藤 信一郎准教授Shin-ichiro Sato
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山本 拓矢准教授Takuya Yamamoto
主な研究業績
- Oziri, O. J.; Maeki, M., Tokeshi, M.; Isono, T.; Tajima, K.; Satoh, T.; Sato, S.; *Yamamoto, T. Langmuir 2022, 38, 5286–5295.
DOI: 10.1021/acs.langmuir.1c03027 - *Yamamoto, T.; Masuda, Y.; Tezuka, Y.; Korchagina, E.; *Winnik, F. M. Langmuir 2022, 38, 5033–5039.
DOI: 10.1021/acs.langmuir.0c03358 - Oziri, O. J.; Wang, Y.; Watanabe, T.; Uno, S.; Maeki, M.; Tokeshi, M.; Isono, T.; Tajima, K.; Satoh, T.; Sato, S.; Miura, Y.; *Yamamoto, T. Nanoscale Adv. 2022, 4, 532–545.
DOI: 10.1039/D1NA00720C - Watanabe, T.; Chimura, S.; Wang, Y.; Ono, T.; Isono, T.; Tajima, K.; Satoh, T.; Sato, S.; Ida, D.; *Yamamoto, T. Langmuir 2021, 37, 6974–6984.
DOI: 10.1021/acs.langmuir.1c00513 - Wang, Y.; Quinsaat, J. E. Q.; Ono, T.; Maeki, M.; Tokeshi, M.; Isono, T.; Tajima, K.; Satoh, T.; Sato, S.; Miura, Y.; *Yamamoto, T. Nat. Commun. 2020, 11, 6089.
DOI: 10.1038/s41467-020-19947-8 - *Yamamoto, T.; Hosokawa, M.; Nakamura, M.; Sato, S.; Isono, T.; Tajima, K.; Satoh, T.; Sato, M.; Tezuka, Y.; Saeki, A.; Kikkawa, Y. Macromolecules, 2018, 51, 9284–9293.
DOI: 10.1021/acs.macromol.8b01681 - *Yamamoto, T.; Inoue, K.; Tezuka, Y. Polym. J. 2016, 48, 391–398.
DOI: 10.1038/pj.2015.134 - *Yamamoto, T.; Yagyu, S.; Tezuka, Y. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 3904−3911.
DOI: 10.1021/jacs.6b00800 - Xiong, K.; Mitimo, H.; Su, X.; Shi, Y.; Sato, S.-I,; Ijiro, T. Nanoscale Advances, 2021, 13, 3762-3769.
DOI: 10.1039/D1NA00187F - Nomura, S.; Sato, S.-I, Erata, T. Chem. Phys. Lett., 2020, 742, 137154.
DOI: 10.1016/j.cplett.2020.137154
News
応用化学のものづくり
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連絡先
佐藤 信一郎
s-sato(at)eng.hokudai.ac.jp
山本 拓矢
yamamoto.t(at)eng.hokudai.ac.jp